どうにか猫はひと通り塗れたので、背景に移ります。
ポリクロモスとアルブレヒトデューラーは茶トラ猫を描く基準で色を選択しており背景への対応を考えていない、ケント紙に対する各社の色鉛筆の使い心地も試したい、といった理由もあり、背景はファーバーカステル以外の手持ちの色鉛筆をいろいろ試してみることにしました。
1.ダーウェント・インクテンス
バーク、ダークチョコレート、サドルブラウン、オーク使用。主に上半分の暗い範囲。
ねっとりとした描き心地で、かなりの摩擦抵抗感があります。シボ目の荒い水彩紙ではそこまででもなかったのですが、ケント紙の平滑な紙面に対して芯先がべったり密着するからだろうと思います。
もともと濃い色合いなのでケント紙のような滑らかな紙面に対しては筆跡が目立ち、ぼかすような塗りは難しいです。また、芯を尖らせてしっかり塗り込まないとケント紙であってもわりと紙目が多めに浮き出ます。
2.ダーウェント・カラーソフト
ピーチ使用。主に下半分の明るい部分。
ソフト系の色鉛筆のはずなんですが、ケント紙上だと意外とカサカサした描き心地です。たまたま淡い色を選んだためにそう見えるのか、色乗りは思ったより冴えない感じでした。また、他の色の上から重ねて塗っても、あまりブレンディング効果は得られませんでした。
3.ダーウェント・ドローイング
ベネチアンレッド、マースオレンジ使用。中間部分や左側下端のオレンジっぽい範囲。
今回試した中では一番描きやすかったシリーズです。いかにもソフト色鉛筆な柔らかさですが、インクテンスのような塗りの抵抗感はなく、それでいて色もしっかり乗ります。
惜しむらくはカラーバリエーションがかなり少なく、しかも色相が偏っていることでしょうか。猫を描く分には支障はないのかなとは思いますが。
4.ターレンス・ヴァンゴッホ
グリニッシュアンバー、ローシェンナ使用。右側上半分の暗い緑がかった範囲。
もともとカサカサな描き心地のシリーズですが、今回も同様でした。色乗りも特別良いとは言えませんが、悪いとまでは言えないどっちつかずな感じです。
不思議なことに、他の色を塗った上からだと比較的よく色が乗ります。重ね塗りでのブレンディング効果もわりと有効でした。
5.サンフォード・カリスマカラー
ダークブラウン、セピア使用。右側上半分の暗い範囲。
インクテンスと守備範囲がかぶってしまい、思いのほか出番がありませんでした。強引に使ってみた感じでは、色乗りはかなり良くそれでいてインクテンスほどの抵抗感もなく使いよい感じでしたが、濃く塗ると安物のクレヨンをグリグリ塗った時のような塗りムラがやや出やすいようです。
意外とケント紙とは合わないのかも知れません。
6.シャチハタ・ファーバーカステル
みどり、きみどり使用。中間部分の緑っぽい範囲。
我らがシャチハタカステルはグリーン系の色不足をカバーするために動員。もともとこういう目的のために購入したので面目躍如というところですね。
すでに経験済みの話ですが、滑りが良く楽な描き心地ですが色乗りはやはりアレです。また、実用に供して気が付いたことですが、セットされている色の多くがなんと言うか、近代的、人工的な色調で、とてもカラフルなんですが、自然風景に使おうと思うと何となく使い難い感じがします。
今回も他社の色を重ね塗りして人工感をセーブする必要がありました。
ちなみに今回使った色の色見本です(ピンクマダーレーキのみ未使用、シャチハタは猫の目に使った分は省略)。
左端はファーバーカステルとシャチハタ、中央はダーウェント、右端はヴァンゴッホとカリスマカラーです。
※撮影画像なので実物とは色合いが若干異なる可能性大です。
全体的な評価としては、紙質や色鉛筆の種類(ソフトでもハードでも)に関わりなく、広い面積を手早く塗ろうとすると紙目の下地が浮き出して白っぽくなる傾向があるようです。また、このような白く浮き出た紙目は、ケント紙のような平滑な紙であっても完全に塗りつぶすのは手間も労力も必要になります。
平滑な紙ほど筆跡もしっかり残りやすいので、これを消す(誤魔化す)のにも同様な手間が必要です。比較的平坦な面、あるいはピンボケ、グラデーションになっているような面の塗りは、色鉛筆よりは絵具(水彩やアクリル)のほうがやはりスピードと塗りの手間の面で有利そうです。
しかし作業の準備や後片付けの手間まで含めると、一概に絵具系が有利とも言えず悩ましいところではあります。