これまで色鉛筆を使った猫の絵を描くための画材研究を続けてきましたが、もともと自分の手持ちの色鉛筆は「子供が使うレベル」しかなく、猫という特定のモチーフを描くにはあまりに不足過ぎたので、新規に購入せざるをえませんでした。そこで当然、各メーカーの色揃えもチェックすることになります。
大手のメーカーから出ている分は、基本的には全色相をまんべんなく揃えているわけですが、それでも色の数が増えるとメーカーごとの特徴が現れます。国内メーカーで有名なのは三菱やトンボ、ホルベインになると思いますが(意外とアーチスト向けの本格的な色鉛筆を扱っている国内メーカーは少ない)特にホルベインのアーチスト色鉛筆のラインナップを見て気になったことがあります。ホルベインは他社と比べても、いわゆるパステルカラー、淡く明るい色調の色が多いのです。
猫を画題にするにあたっては色付きの猫、例えば茶トラ、キジトラなどを最初の頃は選択していましたが、同時に、白猫などはどうやって描くのか?という問題も早くから認識していました。白は、茶白やキジ白、三毛といった他の色柄の猫にも多く現れているからです。白猫を描くためのスキルがあれば、他の白混じりの柄もフォローしやすくなります。
しかし色鉛筆の場合、水彩やアクリル絵具と比べても自分で色を作るという点に関してはやや柔軟性に欠け、メーカーが出している色の種類に依存する傾向が強いというのが、使ってみた実感としてあります。なので、ホルベインの充実したパステルカラーのラインナップを見て、これだけあればホルベインだけで白猫を描ける色を取り揃えることができるのでは?と思ったのでした。
とは言え、ホルベイン製の色鉛筆は海外メーカーほどではないにせよ割高で、ラインナップの中には猫を描くのには必要でない色も多くあるので、ファーバーカステルで茶トラ用の色を選択したように、ホルベインで白猫用の色をピックアップして揃えてみようと考えました。
で、とりあえず揃えたのがこちら。
437 コスモス
080 バーガンディ
328 ラベンダーブルー
175 サンド
076 アッシュローズ
270 ウィローグリーン
122 ジョーンブリヤン
171 コルク
173 ベージュ
524 ウォームグレイ#4
526 ウォームグレイ#6
533 クールグレイ#3
535 クールグレイ#5
511 ランプブラック
500 ホワイト
うまくいけば、例えばホルベインとファーバーカステルの組み合わせで茶白猫を描くことができるし、そこに黒を組み合わせるだけで三毛猫も描けるはずです。
紙は、前回エクストラホワイト極細目を使いましたが、今回はエクストラホワイト荒目を使ってみることにしました。荒目の紙に色鉛筆を使うと、精度が出ずぼんやりした仕上がりになりがちなのですが、これが白猫を淡いタッチで仕上げるのにちょうど良いのではないかと思ったからです。エクストラホワイトの純白な紙面も、白猫にはふさわしいと思います。
ようやく準備が整ったので描いていきます。モチーフは
pixabay よりMabelAmber氏の作品をトリミングして使わせていただきます。
いつものようにアーテレーズで下書きしましたが、エクストラホワイト荒目は特にシボ目が目立ち、手触りにも(シボ目とは別の)紙ヤスリのようなザラツキがあってアーテレーズでの精密な下書きは難しいです。消しゴムかけは、良く消えるとまではいきませんが、コットン紙としては意外にマシな方だと思います(色鉛筆の種類にもよる)。コットン紙には通常の消しゴムより練り消しの方が良く消えるし消しやすいし、消しカスが残らなくて良いです。
白猫を塗っていきますが、通常の猫とは違うアプローチになります。まずはダーウェントのインクテンス(水彩色鉛筆)を使って猫のアウトラインを縁取りしていきます。背景にインクテンスを使うのは、後で水入れをしてシボ目の凹みに色を回すためです。
紙のシボ目とインクテンスのソフト性のために精密な毛並み描写はほぼ無理です。もっとふわっとした毛質の外形なら表現できなくはないと思いますが、長毛種の外形は意外としっかりした毛先が長く突き出ていて、むしろソフトタイプの色鉛筆での描写は難しいくらいでした。