さて、ここまで実質的なケント紙であるブリストルスムースパッドと、コットン系水彩紙であるウォーターフォードホワイトをテストしてきました。で、もうひとつどうしても確認しておきたいカテゴリが残っております。
それはパルプ系の水彩紙です。
コットン系水彩紙に比べて廉価でそれなりに使用実績もあるパルプ系水彩紙は、使用感が良好であれば優先的に採用したい紙種であります。そこで今回は、ヴィフアールの細目をテストしてみることにしました。
比較のための試作ですので、当然紙以外の使用画材とモチーフはこれまでとほとんど同様になりますが、自分にとっては必要な作業とは言え、ネタ的には同じ絵の話を3回も繰り返すのはさすがに芸がありません。なので、今回はかっとばして前/後編の構成でお届けします。
ヴィフアールの細目ですが、その表面は目視ではややシボ目が目立ちます。平滑な範囲とシボ目が浮いている範囲とが半々でまだらに入り混じっているような感じです。真っ白だったウォーターフォードホワイトとは異なり、いわゆるナチュラル色と呼ばれる、生成り色がかった紙です。
ポリクロモスとアルブレヒトデューラーの色見本を事前に作成してみた感じでは、色乗りは良く発色もまずまずでした。ただアルブレヒトデューラーに水入れしてみると途端に発色が弱く薄くなるのが気になりました。
ポリクロモスのテラコッタで第一段階の毛並み入れ。
下書きのアーテレーズでは色乗りは良好でしたが、ポリクロモスだと紙面の滑りが良過ぎて色が乗り難い感じがします。
色が乗らないということではなく、しっかり塗り込めばちゃんと発色はしますが。
芯が柔らかめの水彩色鉛筆のアルブレヒトデューラーのほうが色乗りは良いかも知れません。
ポリクロモスのバーントシェンナで第二段階の毛並み入れ。
ナチュラル色のヴィフアールでは、バーントシェンナはかなり彩度が低め、セピアに近い発色になります。
ウォーターフォードホワイトでは赤みが強く見えましたが、ヴィフアールでは普通に影色として使えそうです。
アルブレヒトデューラー含めてファーバーカステル5色での全体塗り。
やはりポリクロモスよりアルブレヒトデューラーのほうが色乗りは良いようです。ただそれでも紙目を完全に埋めるところまではいきません。
まあこれは色鉛筆の問題と言うより紙の問題でしょう。水彩紙では表記上細目であっても紙目はどうしてもやや荒めに出てしまいます。
ファーバーカステルでの仕上げレベルまで来ると、ウォーターフォードホワイトに比べ、イエロー寄りのオレンジ色が強く発色してきます。下地がナチュラル色の紙だからだろうと思います。
また、全体的な色の濃さもヴィフアールのほうが強くなる感じです。ただ発色(彩度)はおとなしめになるようです。
リアルな動物絵(特に哺乳類)という意味ではヴィフアールは悪くないと思いますが、絵的な見栄えの点ではアピールが弱くなるかも知れません。